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全ての話が終わってからのパラレル
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 何か久しぶりにこいつを運転したような気がする。

 ついつい弾んだ気分になるのは何故か。そして何故か沈んだものがどこかにある気になるのは何故か。

 左を見る。誰もいない助手席。少し疑問。何気なしにシートに触る。もうすぐ夏に近いこの時期の温度しか伝えてこない。安心したのか、余計不安になったのかすら分からない。

 ハンドルを切り、いつもの路肩へ駐車する。この所レッカーはないが駐禁切り部隊が出てくる。面倒だ。

 いつものように…ドアを開ける。初夏の日差しに慣れた瞳が暗闇に慣れずにちかちかとハレーションを起こす。
「……ッス。ブルマン。」
 波児がぽかーんとした顔をして自分を見ている。そして何故か…人が多い。

 カラーン

 見ると、夏実がトレーを落としている。何がそんなに驚く理由があるのかが分からない。
「おい、蛇ヤロー。」
 奥のほうから、いつもの顔がでてくる。
「なんだよ。猿回し。」
 「いつもの」口論になるかと思いきや、やや不思議そうに尋ねてくる。
「銀次は?」
「は?」

 自分があまりにも変な顔をしていたのだろう。ヘブンがきいてくる。
「だから、銀ちゃんは一緒じゃなかったの?」

銀次?銀ちゃん?

「誰だ?そりゃ。」

 ぽと。と波児のタバコが落ちる音が聞こえるくらい、周囲は静まった。何が起きた?

「お前、今までどこにいたんだ?」
 ややあって、いれたてのブルマンを出してきながら波児が尋ねてくる。
「ああ。いつもの公園の「てんとう虫」の中だぜ?それが?」

 その言葉に全員がああ…とため息をつく。何が起きているんだ?

 自分…美堂 蛮の記憶がかなり欠落していることを理論だてて説明されて10分間。

 無限城でしか生きていられないはずのパソコン小僧が外に出ているっつー時点で驚きだが、無限城のメンツが殆ど揃っているのにも驚いた。確かにパソコン小僧が整然とまくしたてたことだけはある。

 だが。

「俺は俺が信用するまで事実とはうけとめねーんだよ。」
 タバコに火をつけて、さっさと店を後にする。あーあー、やだねー。あんな辛気くさい顔は。寄ってたかって責めるようなまなざしは。

あーあー、やだねー。

ホントーに、嫌だ。かったりぃ。

 確かに記憶の前は冬だったような気もするが…あやふやだ。
 とりあえず、車に戻るとすんべぇ。なぁ…?

 ?

 何、横を向いているんだ?
 訳が分からなくなるぜ…ったく。老けたか?この美堂蛮様が?
 少し頭が混乱しているらしい。車のドアを開けるとむわっとした空気が入ってくる。この短時間でだ。ちっ、日陰に移動だ。
 高架下に移動して、車を止めると、窓を全開にして考える。

 あーっ!駄目だ。思い出せねぇ。

 寝るか。と寝だしたら、後にゃ止まらねぇ。
 起きたら次の日でやんの。たまんねーね。…全く。

 さて、と。どうするかねぇ、これから。
 なんかHONKY TONKにゃ近寄らないほうがいいようだし。ヘブンの電話待ちだな。

 っかー、ビラ配りかよ。面倒だ。
 それよか、公園で顔洗うか。

 移動だ、移動。それから考えよう。

 そうしよう………
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まく「名前…」
波児「まだ決めてないのか?」
まく「難しいものですね。こういうのはなかなか…誰かに決めてもらおうか。」
笑師「ならMAKUBEXやから最初に「す」の名前が入らないといけまへんなぁ。」
士度「俺らは全員MAKUBEXで慣れちまってるからな。」
まく「そう…ですか。」
花月「す…で始まる名前…ねぇ。」
十兵衛「…すぶた…」
朔羅「…貴方にネーミングセンスはないのは知ってるから黙ってなさい。」
十兵衛「……分かった。姉者。
花月「……相変わらず厳しいね、朔羅。」
朔羅「ええ。センスはありませんから。」
笑師「まくべ…するめ?」
花月「どこまで落ちるんですか?笑師。」
笑師「はは…ジョーダン、ジョーダンですわ。」
士度「難しい…意外と。寸止め、雀、諏訪大社…」
柾 「…連想ゲームじゃないぞ、お前。」
ひみ「素でヒッキーって聞いてたから、すひき…」

全員「………………蛮の妹だ。」

ひみ「どういう意味?」
へぶ「そのまんまの意味ね(ため息)。」
まく「やっぱり銀次サンが戻ってから決めてもらおう。」

全員「それもどうだと思うけど?」

波児「(…卑弥呼ちゃんと同じことを言おうとしていた俺も…なのか?)」
夏実「あれ?マスター、どうしたんですか?」
レナ「顔色悪いですけど…?」
波児「い、いや、何でもない。」

 何故だか分からないが、銀次や蛮を良く知っている者たちは、不思議とまずはここのドアを開ける。
 最初はMAKUBEXだった。
 次に来たのは絃の花月と夜半だった。続いて士度、筧姉弟、笑師…続々とこのドアを開ける。

 そして言い合うのだ。「銀次は…?」と。

「兄弟仲良くね。」と言われた。と花月と夜半。
「マドカちゃんによろしく。」と言われた。と士度。
「MAKUBEXとカヅッちゃんたちを見てあげて。」と筧姉弟。
「もうちょっと待っててね。」と言われて不思議がっていた笑師は…亜門と再会する。

 それぞれにそれぞれの言葉をかけ、銀次は新しく無限城から産み出している。

 いつの間にか、二人を良く知るものたちの情報場として、HONKY TONKはなってしまった。
「サウスブロックの人たちが戻ってきているようです。」
 花月の言葉に、全員が驚いた。何万とも言われている人間を、銀次は産み出そうとしているらしい。
「やること無茶苦茶ですね…。」
 苦笑しながらMAKUBEXはカフェオレを飲む。彼は無限城時代に培った金を引き出し、大人数が住めるマンションの一室を購入した。そこに本人と朔羅と十兵衛は住んでいる。
「ですが…不思議なんです。」
 花月の言葉に、全員が沈黙する。
「何が不思議なんや?花月ハン?」
 沈黙が苦手な男、笑師が尋ねる。
「覚えていないんです。」
 え?と全員が花月を凝視する。
「…雷帝のこと、邪眼の男のこと…すべてを忘れているんです。」
 まるではじめから彼らはいなかった。というようにサウス・ブロックの住人は言っているらしい。
「何をする気なんだ…?銀次は?」
 士度がイライラとコーヒーを飲む。
「分からない。」
 MAKUBEXが答える。でも、と続ける。
「あの人は0と1にしか存在がなかった僕に3という存在を付与し、肉体を創り上げた。」
 点の世界から線の世界、それを三次元の世界へ。
「…あの人は今、次元を超越して、何かをしようとしている。それはたぶん…」

 全員が俯いた。彼のことだから、一番最初に復活させるはずの相棒。
 邪眼を4回使い、そしてまた蛇遣い座の力を借りすぎて肉体がぼろぼろになっていた男。

「アイツがここに来た時、すべてが終わるんだろーな。」
 士度が呟く。その言葉に全員が俯く。

 はやく、早く帰ってこい。孵ってこい。還ってこい。
 全員の祈りは…まだ届かない。

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